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EU都市排水処理指令改正の動き

 EU では 、1991 年に定められたUrban Waste Water Treatment Directive(都市排水処理指令)により下水の収集、処理、放流水質基準等が定められており、EU 加盟国ではこれを遵守するよう国内法および州法が定められている。

 2022年10月、本指令の大幅改正案が提出され、現在、改正に向けたプロセスが進められており、2024年中の採択が予想される。主な改正内容は以下の通り。

 

  • より小規模の処理場まで適用対象を拡大
  • 栄養塩放流規制の強化
  • 雨天時汚濁負荷削減に向けた都市排水管理計画の策定義務
  • 日用品・医薬品類に由来する微量汚染物質の除去が義務付け、その費用は拡大生産者責任のもと製造メーカ等が負担
  • 流入下水中の病原菌やウイルスのモニタリング、および流入・放流水中の抗生物質耐性菌のモニタリングが義務付け(下水疫学の実装)
  • 下水処理水中のマイクロプラスチック濃度のモニタリングが義務付け
  • 全加盟国における下水処理場全体のEnergy Neutralityの達成

 

 近年話題となっているキーワード(微量汚染物質、マイクロプラスチック、下水疫学)も多く取り入れられた規制強化であり、健全な水環境の確保と生態系の保全以外にも、規制強化をテコとしたEUの水関連産業の競争力確保もその狙いにある。脱炭素のように、これらの方向性が世界のスタンダードとなるかどうかはまだ分からないが、その動向を注視したい。なお、適用対象となる処理場規模や達成年度等の詳細は改正案原文を参照されたい。

 

引用先: European Commission