経済産業省・製造産業局通商室長 兼 国際プラント・インフラシステム・水ビジネス推進室長 吉岡孝様への質問と回答
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質問 ⽔以外のインフラ市場において、特に他業界(鉄道、電⼒など)と⽐較した場合、⽇本の⽔関連企業の課題、改善点を教⽰ください。 |
回答 ⽇本の⽔技術は、低漏⽔率や海⽔淡⽔化などの⾼い要素技術⼒への訴求がある。鉄道や電⼒分野の技術も同様である。⼀⽅で、⽇本国内の⽔道事業の運営は、公的主体が中⼼であり、鉄道や電⼒のように、採算性を取りながら運営する⽅式とは異なる。⽔道事業は、⽇本で⾏っている料⾦回収や漏⽔管理のノウハウ等に、商社等が海外で有する事業投資や運営の実績を組み合わせることで海外への売り込みが有効となる。このような事業環境は、⽔と、鉄道や電⼒分野と異なる。 |
独立行政法人国際協力機構(JICA)地球環境部次長
兼 水資源グループ長 松本重行様への質問と回答
質問 途上国における⽔処理プラントにおける⽔質に関する維持管理の現状について教えてください。 |
回答 途上国のレベルには⾮常に大きな差があり、例えば⻑年⽇本の技術協⼒を受けてきたカンボジアの⾸都プノンペンの浄⽔場では、⽔質基準を順守した浄⽔を24時間⽣産しており、維持管理も標準作業⼿順書(SOP)に基づいてしっかり⾏われています。⼀⽅で、⽔質よりも⽔量を重視し、⽔質基準が遵守できていない状況でもそのまま配⽔してしまっている浄⽔場も多くあります。特によく⾒られる問題は、⾬期などの⾼濁度時に濁度を落としきれていないケースや、凝集剤や塩素を注⼊する薬注設備が腐⾷等により故障してしまっているケースです。これらの問題の背景には、ジャーテストを⾏って濁度に応じて凝集剤の注⼊量を変えるといった基本的な作業ができていない、機材のメンテナンスができていない、定期的な⽔質検査とその結果の運転へのフィードバックができていない、といった維持管理上の問題点があります。 |
質問 ⽔処理プラントの導⼊よって健康被害リスクが確実に低減されているのでしょうか。 |
回答 上記回答のように処理状況には問題のある浄⽔場も残されていますが、原⽔に比べて、健康被害のリスクは低減されていると思われます。 |
質問 事業運営権対応型無償資⾦協⼒に関して、事業者側のリスクを担保する法制度までをカバーした実施可能性はあるか。また、具体化している法制度はどれくらい整備されているのでしょうか。 |
回答 事業運営権対応型無償資⾦協⼒では、相⼿国政府機関と⺠間事業者の間の事業契約において相⼿国政府等がカバーすべきリスクとして規定されるもののうち、開発事業としての効果発現の上で重要なものは、相⼿国政府機関とJICAの間で締結する贈与契約においても相⼿国政府の義務として明記するなどの対応を取ることにより、相⼿国政府機関による義務の不履⾏というリスクを低減する想定です。また、事業契約における重要なポイントについては、相⼿国政府機関とJICAの間でも書⾯で確認することを想定しています。しかし、新たな法制度まで整備することは想定していません。各国政府は、公共調達法やPPP法などの関連法令を定めていますので、それらの法律の枠内で事業を実施することになります。 |
質問 海外、アメリカ、中国の途上国⽀援状況を教えてください。 |
回答 ⽔・衛⽣分野の途上国⽀援(⽀出額ベース)は、2016年の実績で⽇本が1位、ドイツが2位、フランスが3位、EUが4位、⽶国が5位となっています。これは、経済協⼒開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)に対して、加盟国が報告をしている数字によるものです。中国はDACに加盟しておらず、途上国⽀援額を公表していないため、不明です。 |
信州大学 特別特任教授 遠藤守信様への質問と回答
質問 DLC膜について、膜面積はどの程度でしょうか。実用化に向けて膜面積は課題と認識しているためです。 |
回答 膜サイズは装置依存です。プラズマCVDを使えば連続成膜が可能です。我々は20cmx100cmを調製しています。 |
質問 CNTについて、濃縮により炭酸カルシウムのスケール発生、堆積の課題は残存するのではないでしょうか。 |
回答 スケールの沈積も著しく減少可能で、論文発表しています。 |
質問 分子動力学法解析に用いられるツールは何でしょうか。 |
回答 ACS materials and interface誌他に論文発表しています。ご参照ください。 |
質問 炭素膜を工業的に用いる際の製造コストは、従来膜と比べてどの程度ちがうのでしょうか。 |
回答 CNTも安価になり、コスト上ほとんど問題になりません。 |
質問 炭素膜は耐放射線性があり、脱塩以下に、原子力分野の廃棄物処理に使用できないでしょうか。 |
回答 耐放射線機能は大変に興味がございます。いいご指摘ありがとうございます。 |
質問 CNT+PAのコンポジット化にあたり、CNTの配向は制御していますか。 |
回答 ランダム配向(膜面に平行ですが、面内ランダム)が性能上もっともよくなっています。 |
質問 CNT+PAのコンポジット化にあたり、CNTの添加剤、分散剤を使用していますか。 |
回答 すいません。ここは重要なノウハウです。 |
質問 開発中の新しい膜について、海淡の所要圧力、透過水と濃縮水の圧力関して、従来膜とのどの程度違うでしょうか。 |
回答 市販膜と同じです。 |
質問 商業レベルの目標時期はいつで、価格設定をどの程度を想定されていますか。 |
回答 3年後程度です。価格は機能の付加価値によりますのでシステムを組んで実性能を評価してからになりましょう。 |